ドラマチック…グラス。

今日と同じような、元気いっぱいの太陽が降り注いでいた10数年前の夏。

ボクはとあるお店の一角で、ず〜っと一点を見つめていました。



ボクの心を鷲掴みにして離さなかったもの、それは世にも不思議なカタチをした1個のグラス…。



グラスに一目惚れ。
そんな生まれて初めての経験を、見つめるだけにさせていたものは何か?


買えなくはない。

でも

余裕はない。


東京に出て来て間もなかった自分には、気に入ったからとすんなり支払える金額ではなかったのです。




元気すぎる太陽が照らす窓の外を見て目をギュッとしぼめては、視線を落としてキラリと光を反射するグラスを見て目がゆるむ。

そんな動作を何回繰り返しただろう。




家に帰り、そそくさと台所へ。
シンクに置かれたのは、一目惚れした変わったカタチのグラス….が2個。
食器を買う時は、できるだけ偶数で…と決めている。


そこからしばらくは食費を切り詰めたりしたのだろうが、そんなことはもう忘れている。
それよりこのグラスとの思い出は、両手に余るほど覚えている。



そう、今は思い出なのだ。







あの日と同じような暑さの今から3日前。
オリンピックを観るのにも疲れた自分は、急にふと思い立って、前から行きたい行きたいと思っていたJAZZ喫茶へ。

『はじめるぞ!』と意気込んだこの趣味。
ちゃんと続いてるな、とほくそ笑みつつ、たどり着いた未知の扉。
初めて来たお店の扉を開ける時は、いつも冒険気分が盛り上がる。


その扉を1センチ手前に引いただけで、その隙間からグワっと音の波が耳に押し寄せてくる。
JAZZ喫茶のこの瞬間がとてもすき。




この未知の扉の奥に目をやると、まるで地元の雷門の脇に立っている“風神・雷神”のごとくたくましいスピーカーが2台、鎮座していました。
しかしそのたくましさとは裏腹に、流れている音の優しいこと。

お店に入って自分の気持ちが落ち着くまでに、そう時間は必要ありませんでした。



『これでアイスコーヒーまで美味しかったら完璧やな。』



そんな期待を抱きつつ音楽に浸っていると、『お待たせしました。』とマスター。
その瞬間、一気に蘇った先の思い出。




その期待したアイスコーヒが注がれたグラスが、あの夏の日に一目惚れしたグラスだったのです。
なけなしのお金で買った、大好きだったあのグラス。
なんだか胸がいっぱいになって、熱いものがこみ上げそうになるのを我慢しつつ、マスターの手が空いたのを見計らってお話を伺うと、やはり同じもの。


作家さんのお名前や、今もまだ手に入る可能性があることを教えていただきました。


すべて手作りなので、全部微妙にカタチやサイズが異なります。
またどんな子がウチに来てくれるか、今からとても楽しみ。


でも…


今回の出来事で一番心に残ったこと。
それは、10数年の時を経て、こんなドラマチックな出来事に巡り合えた、最初のきっかけ。

なけなしのお金だったけど、自分の気持ちに正直になって、一目惚れしたグラスにがんばってお金を払えたこと。



タイムマシンがあったら、何時間も迷っていたあの時の自分に伝えたい。



『買ってくれてありがとう。おかげでドラマチックな再会を味わえた。あと、10数年後には迷わず買えるようになってるから心配すんなよ』


ってね(笑)







【今週の看板娘】

作業中にそんな目で30分以上見つめるのはやめていただきたい。





【今週の教室風景】

久しぶりにアトリエの改装をやりました!
その理由は…9月ぐらいにお伝えできるかな(笑)




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「ドラマチック…グラス。」への2件のフィードバック

  1. バンディさん、あれあれ小説家になるのでしょうか?小説の一節を読んでいる様でしたよ。狙いですか?youtubeでバンディさんの帆布トートバッグ製作の説明を目にしました。相変わらず頑張っていますね、とても丁寧に説明されていて参考になりました。私は今、人生で一番痛い思いをしています。坐骨神経痛に突然なってしまい耐えています。先日、息子の嫁さんから鬼滅の刃全巻を借りて一気に読みました。漫画はあまり読まないのですが、時間のある生活を送っているのでまあまあ楽しめました。つまらないコメントで申し訳ございません。

    1. なんか小説風…でしょ?
      普段、小説なんてまったく読まないですが(笑)

      坐骨神経痛出ちゃいましたか〜
      自分の職人仲間も何人もいます。
      座りっぱなし作業の職業病ですね。

      ということは、大野さんも職人並みに作ってるということですね!
      技術も上がって、作ることが楽しくてしょうがないかもしれませんが、健康な体があってのこと。
      ほどほどに楽しんでくださいね。
      お大事にしてください。

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