アトリエの顔になる扉。
この扉との出会いも運命的でした。

ウチの顔になってまだ12年。
まだ…というのもこの扉、元は大正時代の小児科の病院で使われていたものでした。
大正時代というと、1912年〜1926年の14年間ですから、約100年前の扉です。
目に見えない、何かのご縁で自分のところに来てくれたこの扉を、とっても大好きで気に入っています。
出会ったのは目黒にある和骨董のお店。
一目惚れして、さらにサイズも奇跡的にシンデレラフィット。即決でした。
仕入れた店長さんも『私も本当に気に入っていて、どなたとご縁があるかとっても楽しみだったんです。』と話が盛り上がる中、こんなことをおっしゃいました。
『実はガラスは交換してあるんです。オリジナルには“〇〇病院”と名前が書いてあったので…さすがに。』
確かにその名前が書いてあるまま使うわけにはいきません。
が、“このガラスにいつかウチの名前を入れたい”とと考えたのは、この扉に出会ったその日からでした。
そして12年の時がすぎ、2025年9月の頭。
たまたまインスタグラムに流れてきた一枚の写真に心を奪われました。

よくアメリカの映画とかに出てくるサインペイント。
今までもいくつか見かけることはありましたが、『なんじゃこのカッコええのはー!』と、こんなにも心を動かされたサインペイントに出会ったのは初めてのことです。
このペインターさんのプロフィールを見ると、本場アメリカで修行を積んで、今は東京で活動しているとのこと。
すぐにメッセージを送ってコンタクトを取りました。
まぁ我ながら心動かされた時の行動の早さにはビックリします(笑)
見積もり、打ち合わせ、日程などなど、驚くほどすんなり決まり、これがホンマのご縁があったっちゅーことやね!と言わんばかりのスムーズさ。
そして迎えた当日。

事前に渡してあった教室のロゴを、施工するサイズに用意してくれてました。
実はすべてがスムーズに進んでいた中で、一つだけ時間を要したことがありました。
それは、“BANDY’S”の文字を修正させてほしいと提案があったことでした。
というのも、手描きにもこのベースとなるフォントが存在するそうで、角度が少し違うのが気になると指摘してくれたんです。
そして実際に手描きしたロゴを見せてくれました。

素人目にはほとんど同じように見えましたが、明らかに違うのは“ Y ”。
迷いました。本当に。
何を迷ったかというと、文字をいじることと、この職人さんの“作家性”を出せないお仕事をお願いしようとしてることに。
例えば自分のところへ来たお客さんが、ずっと愛用してきたルイ・ヴィトンの財布を取り出し『これと一緒の財布を違う革で作ってほしい』と依頼してきたらどうするか?
仕事がまったくなかった駆け出しのころなら…やむなく受けてしまうでしょう。
ただ、今だったら。間違いなく断ります。
そのできあがっている財布に、自分の作家性を入れることができないからです。
もちろんこの職人さんは、自分の作家性を出したいがために提案してくれたわけではありません。
しかし、こういう仕事に対する職人のデリケートな部分が、自分も痛いほどわかるからです。
そしてもう一つ大切なこと。それはこのロゴへの思い入れ。
このロゴはQrinafと同じ、長い付き合いの幼馴染と試行錯誤して生み出したものです。
もちろんパソコンで作ったものですが、彼の超一流の技術で文字を作ったり、ミリ単位でバランスを考えてもらいました。
自分はこのロゴが本当に大切で、本当に大好きです。
このロゴへの思いを職人さんにすべて伝え、ロゴはそのままで、あなたの技術力だけを貸していただきたいとお願いしました。
すると職人さんからは『逆に迷わせるようなことをしてしまって申し訳ない』と言ってくださり、快く仕事を受けてもらえることになった…という経緯があったのです。
素晴らしいお人柄の方で本当によかったです。

ガラスのどこに描くか、慎重に位置決めをします。

まず、文字のアウトラインを描いていきます。
もちろん筆を使って手描き。

アウトラインとミシンを描き終えた頃には外は真っ暗になっていました。

作業二日目。
いよいよ文字の中に金箔を貼っていきます。
この昔ながらの金箔文字が憧れだったんです。

文字の中以外の金箔を除去していきます。
ずっと憧れていた職人さんによる手書きサインが、その姿を表します。

丸二日間かけて、いよいよこの扉に教室のロゴが描かれました!
いやもう本当に感無量とはこのこと。たまりません。
今どきはカッティングシートで施工するのが普通でしょう。
それはそれでカットラインはクッキリするし、キレイにはできると思う。
しかしこの手描きならではのラインの揺らぎ、筆の跡からひとの温かみを感じられる。
これが味があってなんとも良い!
またこの教室に新しいストーリーが生まれました。

今回このステキなご縁をいただいた、サインペインターの中原さん。
年齢が1つ違うだけというのもあり、お互い刺激を受けまくりでたくさんたくさん話ができて楽しかった〜。
このサインがめちゃくちゃ気に入った勢いで、引き続きウチの表札までお願いしちゃいました。
次はもちろんすべてお任せで!
ってか、教室の看板どころか表札もなかったんかーいっていう(笑)
もう生徒さんが見てみんなすごーい!って言ってくれるやろな〜フフ〜ン♪
とほくそ笑みながら迎えた今週の教室でしたが…
逆に馴染みすぎてあんまり気づいてもらえませんでした!無念!!(笑)
【今週の看板娘】

ちょっと涼しかったので、久しぶりにラン!
と思いきや、夏場の運動不足で足元ヨタヨタ〜
まぁボチボチやってこ!
【今週の教室風景】

もちろん気づいてくれた生徒さんもいましたよ!(笑)
バンディさん、素敵な記事ありがとうございます!
あの日の現場の空気や、扉への思いが文面から蘇ってきて、とても嬉しくなりました。
扉に込められた想いに触れながら描かせていただいたことは、私にとっても特別なものです。
このご縁に心から感謝しています。
表札も気に入ってもらえるよう頑張ります!
嬉しいコメントありがとうございます!
なんかもうあの日のことがちょっと懐かしい感じがするのは自分だけでしょうか?(笑)
こんなステキな職人さんに12年越しの夢をお願いできるなんて、本当に感無量でした。
途中『この人でいいかな〜』なんて妥協しかけたこともありましたが、諦めずに探していた甲斐がありました。
私のアトリエに新しいストーリーを刻んでいただいてありがとうございました!