これがバッグ屋の弟が持つバッグかよ。

『見てコレ。年季入ったやろ〜』



そう言いながら、弟が懐かしいトートバッグを見せてきました。
そのバッグは自分が独立する前、イタリアのバッグを輸入する会社に勤めていた時に出会ったものでした。
いい革を使ってシンプルに仕立てた大きいトートバッグって意外になくて、見つけた時は一目惚れ。シンプルなだけでなく、本体の切り返しがまるでガチャピンのお腹みたいでかわいい!しかも会社がサンプルとして1点だけ仕入れたというレア感も手伝って、社員販売とはいえなかなかのお値段でしたが、意を決して買ったバッグでした。


多分、自分が買った最後で最高額のバッグだと思います。


程なくして独立し、自分が作ったのではないバッグを持てなくなったころ、弟から『何かおっきなトートバッグ貸して(っていうかちょうだい)』と言われ、このバッグが行くことになったのです。


それから約10年の歳月が過ぎ、目の前に現れたバッグの燦々たる有様よ….


カッサカサの




ボッロボロですやん

仕事でも使ってるそうなので、まぁこのバッグのヤレ具合が弟の頑張りと比例してると思えばお疲れさん!とも言いたくなりますが、こんな状態で使ってるなんて、それでもバッグ屋の弟が持つバッグかよ!ってことで、できる限り修理することにしました。



革製品の修理の鉄則、“分解は最小限”。



なんせ持ち手は丸々作り直しですから、持ち手が縫い付けられる分だけ糸をほどきます。



自分も作り手の端くれなので、こういう時に裏側の始末がどうなっているのかを見るのがちょっとした楽しみ。
このバッグは補強と糸どめがちゃんとやってありました。糸を裏側に出して、シール的なもので留めるのはイタリアのバッグでよく見る留め方です。



本体を傷つけないように持ち手を外します。
見てくださいこのカッサカサになった革を!まったくメンテナンスしてなかったようです。



持ち手を少し分解して、使われている芯材を確認します。こちらもシンプルだけど意外にちゃんと仕立ててありました。



先の部分だけ型紙をとります。



たまたま手持ちでよく似た感じの革があったので、これで持ち手を作っていきます。



伸びないようにしっかり補強して、新しい芯材を入れます。



持ち手を仕立てていきます。



出来上がった持ち手を本体に縫い付けるのですが、まず前の針穴と同じ場所に針穴を開けて、その針穴を一つずつ拾いながら本体に縫い付けていきます。



持ち手が付いたら最初に開けた口元を閉じます。これも先に開いている針穴を一つ一つ拾いながら縫っていきます。



最後にカッサカサになった革の表面をしっかりとお手入れして…



出来上がり〜!




あのカッサカサはどこへやら!?ってなぐらいにキレイになりました。



少しでも長持ちするようにステッチとステッチを繋ぐ部分は二重にして、少しVの字に。
直線に縫うより破れにくくなります。
まぁ多分弟はまったく気づいてないでしょうが(笑)

これでまたしばらく使えるでしょう!




バッグを直しながら、とても感慨深い気持ちになりました。

勤めていた会社は今でいう“ブラック企業”で、今まで生きてきた中で一番精神的に追い詰められていました。
逃げ出したくなるような毎日でしたが、頑張って働くうちに見えた未来が“バッグ職人”としての道。
そして10数年たった今、その時買ったバッグを直す技術も身につき、仕事もボチボチやらせてもらっている…
タイムマシンがあったら今すぐ当時の自分に『ゴハン食えるようになるからな!頑張れ!!』って伝えてやりたいです。


まぁ弟はこのバッグにこんな思いがあるなんて知らずにいるだろうけど、もうちょっと大切に使って欲しいな〜ってアニキは思うのでした(笑)





【今週の看板娘】

クルマのリアシートはジーナの指定席。
『遊びにいこか!』っていうと、駐車場へ真っ先に走っていきます。
かわいいヤツめ。



【今週の教室風景】




ご自分が欲しかった理想のバッグをヌメ革で作りました!
ヌメ革ってよく聞きますが、無色のヌメ革で仕立てたバッグは意外と売ってないもの。(革がデリケートすぎるので)
使っていくうちにどう変化していくのか、エイジングがとっても楽しみですね!
お疲れ様でした。




【BANDY’Sレザークラフト 教室のご案内】

現在教室の方は、新規のご入会受付並びに体験教室のお申し込みを一時中止しております。
再開しましたら改めてお知らせいたします。


教室の内容や、生徒さんの作品など詳しくは教室のホームページをご覧ください!
BANDY’S Leather craft school

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